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鷹山孝弘様作

「僕と私とネコ達と男達」
申し訳ありません。
本編との関わりは一切ありません。
当然、これはフィクション中のフィクションです。
間違いありません、これはありえないもしかしたらの物語になります。
だから許してください。
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいルナさん可愛い。










僕と私とネコ達と男達










でん
これだけじゃわからないと思われるので補足しておくと、場所はカイトの町の港から出た海上。
盗賊、ネコの肉球によって強奪された船に乗り込んだはいいものの、ノープランで
多勢に無勢な戦場に飛び込んだルナ達一行は、ものの見事にとっ捕まってしまった。
そして現在、盗賊のお頭であるドグの前に連れてこられた女性陣、ルナとチャイムは、
お約束通りというか原作通りというか、現在、とてもハズカシイ格好をさせられていた。
ハズカシイといっても、別に露出がどうとか、セクシー系なそういうものではない。
むしろ、セクシーというよりはキュートだろうか、本人達ははなはだ遺憾だろうが。
着替えさせられたのは、世間一般で言うところの着ぐるみ。
にゃ〜んとか鳴いてみたらさぞかし可愛いだろうな〜とか世の男どもは思うであろう、
もふもふふにふになルナとチャイムが、そこにいた、笑ってどうぞ。
そんなルナとチャイムの姿に、凄まじく興奮しているおかしなお頭、盗賊ドグ。
「なんで喜んでんの、あの人?」
それは彼が男の子だからです。


というわけで、一気にお話はとんで、ねこじゃらし地獄が始まりました。
まず手始めにと、チャイムの前でねこじゃらしを振って見せるドグ、身体が勝手に動いて
ねこじゃらしにじゃれつくチャイム。
最初の方こそ、勝手に動いてしまう身体に物凄く抵抗していた様子だったが、途中で
もうどうでも良くなったというか考える事を放棄したというか凄く楽しくなっちゃったというか、
とにかく、チャイムはあっさり陥落。
知らないうちに、ごろごろにゃ〜とねこじゃらしにじゃれて、ドグをそれはそれは
満足させてくれた。
ご褒美にたい焼きをもらってご満悦のチャイムを背に、今度はドグはルナへと身体を向ける。
「さあ、次はお前の番だぜ」
「い……」
瞬間、血の気の引くルナ。
目の前のチャイムの姿は、それはそれは可愛らしかった。
だが、あの可愛らしさは女の子だからとか、むしろ人間だからとかそういう問題じゃない。
あれじゃまるで、本物のネコのようなじゃれつきようである。
そう、人ですらなくなるあのにゃんにゃんぶり。
それをこれから、自分がされると思ったのだから、少女ルナの心中、お察し申し上げます。
なお、ここからオリジナル要素がふんだんに入りますのでご注意ください。
「な、なんでそんな嬉しそうなの、チャイムちゃん?」
「こいつにはな、あの着ぐるみとセットで使用すると、着ている人間の意志に関わらず、
いや、着ている人間の好奇心を刺激して思わず手が出るような仕掛けになってるんだぜ」
それは魔法、というか呪いの類ではなかろうか。
「な、なんでそんなもの持ってるの?」
「作った」
んなもん作れるならもっと世の中に役に立つ事をしてよ、と心の中でルナが叫んだとか。
とにかく、今そのネコの着ぐるみを着ているルナは、ねこじゃらしを目の前でふられたら
まず間違いなく、先程のチャイムのようににゃんにゃんな目にあうに違いない。
というわけで。
「いやぁ〜っ!」
ルナちゃん逃走。
「なんで逃げるんだよネコちゃん♪」
もはやドグの方は、ルナを人間扱いしていないらしい、原作からそうだった気もするが。
部屋の中を逃げ回るルナだったが、現在ルナが着ているものは着ぐるみ。
どてっ
「ぎゃっ?」
走りずらいため、あっけなく転んでしまった。
どうにかよろよろと起き上がって、困った顔をするルナ。
だが、その目の前におりる、人間の影。
はっとして顔を持ち上げると、そこにいたのは盗賊のお頭ドグ、ついに追い詰められてしまったようだ。
「さあ、あきらめてネコジャラシの餌食になれ」
ずいっと差し出される凶器、否、狂器、改め呪いのアイテムねこじゃらし。
まだ立ち上がってすらいないルナでは、もう回避不能だった。
「(ああ、もうダメだ……あたしもハズカシイ人の仲間入り……!)」
と、ここで原作ならば相変わらず強引な誰かさんが魔法をぶっ放してくれたのだが。
「ほ〜ら、ほれほれほれ〜」
鼻の先あたりで、フリフリと左右にゆれるねこじゃらし。
「う……」
ピクッと腕が動くが、気合いで一瞬だけこらえたルナ。
だが、本当にそんな抵抗など一瞬しかもたなく。
「にゃ……にゃ〜♪」
気が付いたら、両手がそのねこじゃらし目がけて飛び出していた。
それはもう、飛び出すという表現が相応しいぐらいに勢いよく、本能にまかせたままに。
「(って、なんであたしこんなにノリノリなの〜!?)」
盗賊お手製の呪いのアイテムセットのせいです。
伸ばされた手に対して、ふっとねこじゃらしの先端を避けさせるドグ。
「う?」
「ほ〜らこっちだ〜」
今度は頭の上でふりふりと。
「にゃ〜!」
パシンと頭上で手を打ち合わせるが、またもねこじゃらしはそれを避ける。
「こっちだぞ〜こっちだこっち〜」
次は床、まるでねずみか何かみたいにちょこまかと。
「にゃぁ〜!」
ついにルナ、立ち上がる事を諦めて四足歩行を始めたようだった。
ぴょ〜んと飛び掛かるようにねこじゃらしにアタックするが、ギリギリのところで
ふわりと浮き上がる。
瞬間、頭上に気配を感じてそのまま飛び上がる、勿論四足使って綺麗にバネを使った
ネコジャンプだ。
「おぉっ、このネコちゃんもうすっかり虜じゃん。たまんね〜なぁ〜!」
「にゃ〜♪」
ちなみにルナの心の声は、こんな感じ。
「(あ、すっごい楽しいこれ♪ 夢中になるって、こんなに気持ちの良い事だったんだ☆)」
もう呪いとか関係なく、チャイム以上に重症だったようである。
そんなドグとルナを見ていて、なんとなく寂しそうにしているチャイムが一人、否一匹。
「うぅ〜……ルナさんばっかりずるいですの」
二人とも、どうしてこの船の上にいるのかすっかり目的を忘れているらしい。
そんなチャイムの言葉に、ねこじゃらしを動かすのを一旦やめたドグが、口元だけで
フッとかっこ良く笑みを浮かべると。
「安心しな、ネコちゃんたち」
ババッ!
その手には、ねこじゃらしが二本。
「寂しい思いは、させないぜ」
『にゃぁ〜♪』
というわけで、ねこじゃらし二刀流のドグと、完全にネコ化したルナとチャイムの
にゃんにゃんお遊戯が始まるのだった。


で、この間原作ならばルナ達を助けてくれる人たちは何をしていたかというと。
「た、助けなくていいんですか?」
ゼットの言葉に、扉の裏で様子を見ていたキーニスは一言。
「助けようとしたら逆に俺たちがやられる」
「そ、そうですよね、まだ盗賊の仲間がいっぱいいますし」
いや、とキーニスは首を横に振り。
「折角楽しんでるルナちゃん達に、俺達がやられる」
「そ、そうですかね?」
「そうなんだ、間違いない。ルナちゃんはやる時はやる子だし、チャイムちゃんの
実力もパワーは凄まじい、とても俺達二人ではこの眼福な光景を邪魔しちゃいけない。
だからこっそりと見守るのが一番役得なんだよ」
「あ、あれ……キーニスさん?」
この物語のキーニスくんは、原作とは著しく性格が異なっております、ご注意ください。
なんとなく、キーニスに指揮権を持たせたままでは全てが手遅れになりそうな
予感がしたゼットは、キッと目を鋭くさせて一言。
「じゃ、じゃあ俺だけでも二人の事を助けて……」
トスッ(キーニスの手刀)
ガクッ(ゼット気絶)
「手を出すな、今良い所なんだから」
この物語のキーニスくんは、原作とは著しく性格が異なっております、ご注意ください、二回目。
と、扉の裏でキーニスが飛び出すタイミングを見計らっていた、まさにその時。
「なんだよ、こんな所でみみっちく作戦たててんのか?」
「む?」
背後からの声に振り返ると、そこにいたのは、いつか自分をパーティに誘ってきた、
自称勇者のパーティの二人組。
名前を、男性の方はジン、女性の方はリオと言う。
「あら? あなた程の使い手なら、この程度の敵あっさりと……って、うわ」
そっと扉の先を覗いたリオが、どういう状況になっているのかを知って絶句している。
どうしたんだとジンも覗いてみて、目が光った。
「うわっ、なんかスッゲーおかしなことになってんじゃん」
ちなみに、軽く説明すると、現在はこんな感じ。
ドグ、目の前にお座りしているネコちゃん二匹にねこじゃらし二刀流で一閃。
ドグが二匹の背後にまわった瞬間、ネコちゃん達悶絶。
どうやらあの一瞬で、ねこじゃらしで一瞬、唯一露出していた顔の部分を撫でたらしい。
なんという早業かつ大技、その出鱈目さといったら執筆している作者すら頭痛を覚える程である。
「あれ、呪いか何かかしら……なんにしても、早く助けてあげないと、きっと
あの二人、人生のトラウマになるわよ」
リオはそう言うが、もうルナとチャイムにとって、これはトラウマではなく虜だったりするわけで。
「待てリオ」
と、突撃準備を整えようとしたリオに対して、ジンが声をあげた。
「どうしたの、ジン?」
ジンはそれにはこたえず、かわりにキーニスに顔を向けた。
「なあキーニス……あれ、どう思う?」
問いかけに、キーニスは少しだけ考える素振りを見せて、口を開いた。
「可哀想、だな」
「だろ?」
「そうよね、あんな着ぐるみ着せられて、はずかしい遊びさせられてるんだから」
リオはそう言うが、男二人の『可哀想』の対象は、こちらである。
『(折角にゃんにゃんして楽しんでるのに、邪魔しちゃ可哀想だ)』
キーニスは原作とは著しく性格が違いますが、ジンも若干性格が違います、あくまで若干。
「というわけで、手を組もうぜ」
ジンはそう言うと、すっと右手をキーニスに差し出す。
それを確認して、冷静な視線のまま、キーニスもその手をとった。
いわゆる握手、契約成立の証だ。
「よしっ、決まりね。それじゃあ」
と、リオが改めて突撃しようとした、その瞬間。
トスッ(ジンの手刀)
ガクッ(リオ気絶)
『行くぞっ!』
次の瞬間、リオをジンが担ぎ上げ、キーニスが勢いよく扉をあけた。
バタンッ!
「なっ、なんだなんだ!?」
ねこじゃらし二刀流でルナとチャイムを翻弄していたドグが、慌てた様子で二人を見る。
片方は、先程とっ捕まえたはずのキーニス。
もう片方は、自称勇者のジン、もっともドグは知らないが。
その二人は、動きの止まったねこじゃらしにネコパンチしまくっているルナとチャイムを
ちらっとだけ確認しながら、それぞれ口を開く。
「悪いが、俺たちも仲間にいれてくれ」
「勿論タダでとは言わない。手土産はこいつだ」
ドサッ(リオが床に落とされる)
この男達、最悪だった。


それからはもう、違う意味で阿鼻叫喚の地獄絵図である。
キーニスとジン、そして本人の意思に関係なく強制参加させられたリオの乱入により、
まさにその部屋はにゃんにゃんパーティまっしぐら。
ジンは嫌がるリオを滅茶苦茶かまって『日頃の仕返しだ〜』とか、本当に
勇者らしからぬ事をしていたし、ドグはチャイムに対して、ねこじゃらしだけでなく
マタタビ(呪いつき)を出してそれはもうメロメロのギュウギュウ状態にして、
現在、逆にチャイムのパワーに押されて押しつぶされている状況。
で、キーニスはといえば、ルナを相手にしているわけで。
「二刀流だとルナちゃんはどっちつかずで意外と動かない、だが一本だと俺の腕では
すぐにねこじゃらしが捕まえられてしまって上手く遊んでくれない。せめて俺に
ドグぐらいのねこじゃらし術があれば……修行しないとな。いや待てよ、一本でも
二本でもダメならば、三本はどうだ? ますます迷うか? それとも周りに
好奇心を刺激するものがいっぱいという理由で目を輝かせて、見境なく
飛び回るか? それは是非見てみたいが、三本のねこじゃらしを俺はどうやって
持てばいい? 両手と、あとは……そうか、魔法! 俺の風魔法を応用すれば」
「にゃぁ〜ん♪」
気付けばねこじゃらしにではなく、キーニスの頬にすりつくルナがいるのだった。


こうして続く、船の上のネコの肉球にゃんにゃんパーティ。
それは毎夜のごとく、どころか休むことなく行われて、お互いに疲労を覚えながらも
それはもう楽しい時間を過ごしていた。
もう、邪魔する者は誰もいない。
俺達はこれから、ずっとこんな幸せな日々を過ごしていくのだ。
そう、ネコの肉球はようやく、大切なものを手に入れたのである。
……なんてしめくくりたいが、ちょっと待ってほしい。
こんな収集ついていないとんでもエピソードができて、果たして原作者様はなんというか。
最悪、撃ち殺されるのではないかと背筋が凍る小説作者、つまり私。
だから私は、思いっきり叫びたい。
お願い皆、とくに男ども! 早く正気に戻って本来の物語に戻ってきてぇ〜!


「ん……あれ?」
その後、港に捨てられた少年ゼットは、休むことなく遊び続けたネコの肉球
全体の指揮力と体力の低下により、ゼットを中心とした町の住人達の夜襲によって
どうにかルナ達を助けだし、ようやく原作通りの物語を歩む事になったのであった。
めでたしめでたし……という事にしてください。