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ミラクル★トレジャー
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「プレゼント」

「ルシアン、少し買い物に付き合っていただけますか?」
ルシアンの部屋に訪問したプリム。
今日は2人とも留守番であり、マスターに頼まれた雑用も終えて暇をしていた。
ルシアンは喜んで頷く。
「寧ろまた1人で出ていかれちゃ、たまったもんじゃありませんよ」
苦笑しつつ言うルシアンに、以前の出来事を思い出してか、プリムが少し俯く。
「そうですね。もう皆さんに迷惑をかけるわけにはいきませんから。ですが今回は別の理由があるんです」
そう普段よりキリッとした顔つきで告げる。
ルシアンは首を傾げてはてなマークを浮かべる。
(俺を誘ったのに理由が...?まさか2人で一緒に出かけたかったとか?!)
都合の良い解釈で妄想を膨らませるルシアン。
が、
「実は、イストリアさんへのプレゼントを一緒に考えて欲しいんです」
その言葉によって、ルシアンの夢は儚く崩れ落ちた。
まあそうだよなと、隠しもせず落胆する。
それと同時に
(って待てよ、プリムちゃんが誰かにプレゼントなんて初めてだよな...。まさかあの2人付き合って...?!)
一方プリムはそんな様子を気にすることもなく
「では商店街へ行きましょう。良い掘り出し物があるかもしれません」
そうカウンターへと駆けて、マスターに「行って来ます」と言うプリムを、トボトボと追うのだった。

そんなこんなで商店街に着いた2人。
道を歩きながら左右を見回す。
そしてひとつの店を指差すプリム。
「あの雑貨屋さんを見てみましょう。...ルシアン?」
「いやいや、イストリアにそんな気配はなかったし...お嬢様が隠し切れるとも思えないし...」
下を向いてぶつぶつと呟き続けているルシアン。
そんなルシアンに、普段より大きい声量で再度「ルシアン」と名前を呼ぶ。
「はい?!」
ピンと姿勢を伸ばしてプリムの方を向くルシアン。
心配そうな表情を浮かべながら
「先ほどからずっと上の空ですが...何かあったのなら相談に乗りますよ」
優しく語りかけてくれるプリムに、違う、違うんだ...!と唇を噛み締めるルシアン。
周りが賑やかだからか、幸い独り言の内容は聞こえていないようだ。
ひとつ咳払いをし
「いや、イストリアは何なら喜ぶかと思ってさ、ははは」
と強引に誤魔化す。
プリムは然程怪しむ様子もなく、「そうですね...」と顎に手を添えて考える。
「取り敢えずお店の中を見てみましょう?何かピンと来るものがあるかもしれません」
ルシアンもそうだなと頷き、一緒に店内へと入る。
こじんまりとはしているものの、木の温かさがあるお洒落なお店だ。
「わぁ、食器やブックカバー、筆記用具...色々あって目移りしてしまいますね」
こう言った場所に来る機会はあまりなかったからか、目を輝かせてはしゃいでいる。
市場に初めて行った時も同じように楽しんでいたことを思い出し、そんな姿を見て微笑ましくなるルシアン。
ふとプリムがルシアンの方を振り返る。
「ルシアンはどういったものをプレゼントされたら嬉しいですか?」
少し緊張気味な様子に、先ほどの悩みがフラッシュバックする。
イストリアと同じ男としての意見を聞きたいのだろう。
とは言え、ルシアンにイストリアの好みが分かるわけではない。
少し考えて口を開く。
「俺に限らず、気持ちがこもってればなんでも嬉しいさ。
ほら、マスターも我が子からの手作りプレゼントで、あんなに喜んでただろ?」
ルシアンの言葉に「手作り...」と考えて再度あたりを見渡すプリム。
そしてあるものを見つけて「あ!」と目を見開いた。
「見てください、ルシアン。あっちでアクセサリーの制作体験をやっていますよ」
目線の先にあったのは、自分で好きなパーツを組み合わせてブレスレットを作る体験の出来る空間だった。
今は人がおらず、すぐに取り掛れそうだ。
「お、良いじゃん。イストリアもきっと喜ぶぜ」
そう笑いかけるが、内心はモヤモヤしっぱなしであった。
「んじゃあプリムちゃんが作ってる間、俺はその辺見て回ってるな」
すると嬉しそうに、はい!と返事をして向かっていった。
ルシアンは少し離れた場所で、商品を見るふりをしながら考えに耽る。
(仮にイストリアと付き合ってるとして、2人はそれを隠してるってことだよな?
俺は今後どう振る舞えば良いんだ...?)
色々考え、ちらりとプリムの方を見る。
担当の人の指導を受けながら、一生懸命アクセサリーを作っている。
(...あんなに想ってるんなら、俺もしっかり応援しねーとな)
微笑みながらため息をつく。
適当に見回っていると、しばらくしてプリムが駆け寄って来た。
「お待たせしました!えへへ、担当の方のお陰で綺麗に作ることが出来ました」
嬉しそうに笑って作ったものをルシアンに見せる。
黄色と茶色をメインに、差し色で青や緑、銀などを混ぜたお洒落なブレスレットだ。
「流石はお嬢様、よく出来てますよ。こりゃイストリアは泣いて喜ぶかもしれないな」
幸せな奴めと思いながらルシアンがそう言うと
「どうぞ、ルシアン」
プリムはそのブレスレットをルシアンに差し出した。
ルシアンはきょとん、とそれを見つめる。
ここでようやくプリムの真の目的がわかった。
「元々ルシアンにプレゼントをする予定だったんです。騙すようなことをしてごめんなさい」
「は...え?」
恐る恐るルシアンはブレスレットを受け取る。
確かに改めて見てみると、ルシアンを模したようなデザインになっている。
「い、イストリアは?2人はだって...え?」
困惑するルシアンに、丁寧にことの顛末を説明するプリム。
実はプリムは、ルシアンに普段のお礼をしたいとみんなに相談していた。
出来ればサプライズにしたいと。
しかし、サプライズ出来る自信がなかったため助言を求めたところ、「他の人へのプレゼントと称してルシアンへのプレゼントを一緒に決める」、という意見が出た。
今日2人が留守番なのも、全てみんなの目論見だったのである。
「お嬢様、まさか俺のために...」
全てを聞いたルシアンは、ブレスレットを見つめながら、無意識に口を綻ばせる。
そして満面の笑みで
「ありがとう、おじょ....プリムちゃん。すっげー嬉しい」
そう告げた。
プリムも「こちらこそ」と満足げな表情を浮かべた。

店を出てそう言えばとルシアンが口を開く。
「他の奴らにプレゼント渡したりはしてないのか?女子同士でプレゼント交換とか」
するとプリムはうーんと考え、
「以前イストリアさんにちょっとした物をお渡ししましたが、それくらいでしょうか...。プレゼント交換は素敵ですね!今度声をかけてみます」
そう答えた。
そこでまたもや「い、イストリア?」と固まってしまうルシアン。
「あら、ご存知ありませんでしたか?一目惚れで買ったジュエルバングルをお渡ししたんですよ」
なんの裏もない無垢な笑顔に、またもや落胆する。
最初のプレゼントじゃなかったのか...と、嬉しさと落胆の両方の感情に襲われるルシアンであった。

プリムにとって家族以外への最初のプレゼントは、幼い頃盗賊に渡した宝石だということには、気づく由もない。

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